客船の危険な仕事前回の日記で豪華客船クリスタル セレニティーという私の乗ってた豪華客船との再会話を書いて、そこにフィリピン人のクルー(船員)の事も少し書いたけど、フィリピン人の事についてもう少し書こうと思います。私ね、フィリピンの船員本当に偉いと思うよ。日本ではあんまりそういう目で見られてないみたいだけどね、船の船員は本当に頑張り屋が多かった。 なんてたって客船の危険な仕事をこなす為に雇われてるような人達だからね。 みんな 知らなかったでしょう? 国が貧しいから、船で働く事は彼らにとって「高収入のお仕事」でしかも「世界中をまわる事が出来る」から、彼らにとっては豪華客船で働く事はある意味「プライド」なわけ。 でもね、生活の為に自分の子供を親戚に預けっぱなしで来たりして、頑張った給料の半分は母国に仕送りしてた。 私も学生だった旦那の生活費を船から仕送りしてたからね。なんつーのかなぁ、フィリピン人に同情しちゃったね。 彼らの場合は、すんごい少ない給料だったからなおさら 同情したよ。TT お掃除担当のフィリピン人は月給$600(約6万円)ぐらいしかなかったはず。 (それでもフィリピンでは大金の方。$100で1ヶ月は暮らせると聞いた事があるから、$600はやはり高収入なはず。) で、フィリピン人のウエーターはチップとか、お客から直接もらうから、もっと稼いでたと思う。 そんで危険な仕事をしてたフィリピン人は確か月給$1500(約15万円)と聞いた。 お掃除担当の人の2倍半の給料。 でもね、危険なのよ仕事の内容が。。。。。 何が危険なのかと言うと、 船の底に付いたフジツボをはがし、ペンキを塗るんだけど、これね上からブランコみたいに座って、ロープで吊るされてからやる作業なの。 船って結構デカイから、上から吊るされるのは結構怖いはず。しかも落ちたらかなり危ない。でもこうやってフジツボ落としてペンキを塗らないと穴が開いて浸水の原因になるので入港したら必ずやってる仕事がコレだった。 航海してる間も、夜中に双眼鏡でブリッジ(操縦室)から遠くを見て危険な物体がないかどうか確認して夜中中起きてるのもフィリピン人の船員。 他にも船の屋根をデッキブラシで掃除するのも彼らの役目。 しかも客船が普通に海の上を動いてるのに、ホースの水で流しながら、長靴履いてブラシをゴシゴシかける。 命綱を腰につけて 緊張しながら 一生懸命磨く仕事。 滑ったら・・・・・・もちろんそこは海。 死ぬ人もたまに出ます。 他にも、船が入港して港に泊める時に大きなロープで船がどっか行かないように固定する為に港のフックにつなぎ止めるんだけど、このロープもすんごいデカイ!!!! あれもはさまれたり、上から落ちてきたりすると危ない。 お客が入ってくるときに身体検査するのもフィリピン人。船によっては 戦うための武器を置いてない船があるから、テロが来たら危ないだろうな。まー入り口で正体ばらすテロリストはまず居ないと思うけど。 そんで港のルールによっては船が出港する時に 2隻の小さなゴムボートが必ず寄り添ってついて行かなきゃ行けないんだけど、そのゴムボートに乗って、船に何も異常がないか点検してるのもフィリピン人。 で、ここからすごいのは 動いてるゴムボートから客船の入り口にぶら下がってるはしごに飛び移って 客船に戻ってこなきゃいけないんだけど、このスタントマンみたいな事をする時に一歩間違うと海にドボーーン! で、流れが強いところだとレスキューする前に波にのまれて溺死してしまうらしい・・・・。 副船長の市山さんは「フィリピン人の船員が死んでいく姿を見てた。あっという間に姿が見えなくなって水の泡になった」と過去の事教えてくださった。 こんな危険な仕事で$1500(15万円)もらってる彼らをなんかかわいそうに思う由美どんでした。 だからフィリピン人には特別な「情」があったんだ。 休み時間とかOFFの時に港に気分転換で外に出た時 フィリピン人が周りに居ると何か安い物おごってやったり、 クルー(船員)のお部屋のお掃除も頼めば フィリピン人がやってくれるんだけど、私は毎週チップを多めに置いといた。 タガロ語で「アテ!(お姉さん)」とか英語で「マスター!(師匠)」とか呼ばれたりしてて、可愛い仲間だったなあ。うんうん。。。 あの健気な明るさが好きだった。 めげずに何でも仕事をこなすのが好きだった。 彼らは密かに私の頼もしい味方でもあった。 悲しんでるとすぐに話しかけて慰めてくれた。 急いで食事してSPAの仕事に戻らないと行けない時も、並んでる列を「どうぞ どうぞ」と前に前に入れてくれた。 「働く」という事をフィリピン人から沢山学んだ気がする。 その中でも極めて面白いフィリピン人がいた。 映画評論家の水野忠雄さんにソックリの顔のフィリピン人!実は船での仕事はミュージシャン。ドラムやギターをやってた。歌うのもウマイ。 そしてこのオジサンは物真似がウマイ! 一番上手かったのは「日本のオヤジの真似」 「何やってるんだ バカモノ!」とか、 「あのぉ~~~ あのねぇ。えっとぉ~~~ 何だっけな」とかオヤジが腕を組んで目を半分つぶって、度忘れしたしぐさとか超上手かった!!!よく観察してるなあ~~~ 爆 この人に会うといつも日本のオヤジの真似をしてくれたので、笑いが耐えなかった。苦しい労働の中のささやかな楽しみだった。 「なんでこんな物真似出来るの?」と聞くと水野忠雄もどきの彼は「日本で長い事 出稼ぎしてた時に、マネージャーがいつも怒る時とか マネージャーが悩む時にもこう言ってたんだよ」とさらりという。 日本で出稼ぎかあ。。。。。 苦しかっただろうなあ こき使われて。 やっぱり情が湧いてしまう由美どんでした。 この水野さんもどき、 私が12階のプールサイドを歩いてSPAに帰っていくと、演奏中の水野さんが歌の途中に「あ・の・ね」とか調子をつけて 「1・2・3」の代わりに歌ってたりする。 密かに私達の「頑張れよ」の合図でもあった。 危険な仕事を代わりにしてくれるから、 私達は安全に死なずに済んだ。 ありがとうフィリピンの船員。 この御恩は一生忘れません。 |